韓国「半導体5年で倍増」宣言――AI供給網を巡る投資競争の現在地

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韓国の李在明大統領が9月23日、ニューヨークでの投資家向け会合で、半導体の生産能力を5年以内に倍増させる方針を表明した。背景には、半導体・フィジカルAI・AIデータセンターの3分野に総額4,755兆ウォン(約3.11兆ドル)を投じる「3大メガプロジェクト」がある。9月には米アナログ・デバイセズによるエッジAI半導体の買収もあり、国家と企業の両面で半導体投資がAIインフラを軸に再編されている。

5年で生産能力を倍増――ニューヨークでの宣言の中身

9月23日、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領はニューヨークで開かれた「Korea Investment Summit」で講演し、半導体生産拠点の拡張によって「今後5年以内に半導体の生産能力を2倍にする」と述べた。会合には韓国と米国の金融・企業トップが出席し、対韓投資の拡大を促す場だった。李大統領はあわせて「いかなる衝撃にも揺るがない、重要なAIサプライチェーンを構築する」と強調した(聯合ニュース、9月23日付)。

「倍増」に期限を切って言及した根拠は、韓国政府が6月末に発表した国家計画にある。大統領は講演で、半導体生産クラスターとAI関連施設を建設する「3大メガプロジェクト」に今年すでに着手したと説明した。

総額4,755兆ウォンの「3大メガプロジェクト」

聯合ニュースの7月4日付報道によると、「3大メガプロジェクト」は半導体、フィジカルAI、AIデータセンターの3分野による国家変革を構想し、総投資額は4,755兆ウォン(約3.11兆ドル)に上る。半導体分野では、サムスン電子が西南部の光州(クァンジュ)にメモリ半導体工場2棟を建設する計画を表明。SKハイニックスも周辺の全羅道地域に2棟の工場を建設する方針で、両社の投資計画は合わせて800兆ウォン規模とされる。

計画の特徴は地方分散にある。半導体生産クラスター、フィジカルAI、AIデータセンターの各施設は地方圏に整備される構成で、李大統領はこの構想が「国に新しい希望と機会を作る」ものだと強調し、若い世代に希望と活力を届ける狙いも示した(聯合ニュース、7月4日付)。

実行体制も整えられつつある。韓国産業通商資源部は8月、李大統領への政策報告の中で、3案件を年末までに迅速に実施する方針を示した(Korea JoongAng Daily、8月4日付)。報道によれば、政府は財源を計画に優先配分し、大統領府内にAI専任組織を設けて李大統領自らが進捗を管理する体制を整える。

ただし、計画への批判もある。野党からは政権の支持率狙いだとの指摘が上がっており、李大統領は「計画が支持率のためだったら、6月の地方選挙の前に出したはずだ」と反論した(聯合ニュース、7月4日付)。

エッジAIに13.5億ドル――ADIの買収が補うもう一つのピース

国家による生産能力の拡張と並行して、企業側の半導体再編も進んでいる。米アナログ・デバイセズ(ADI)は9月9日、エッジAI向けの低電力マイクロコントローラーとフュージョンプロセッサを開発するAlif Semiconductorの買収で最終合意に達したと発表した。株主への支払いは現金13.5億ドルで、このほか最大2億ドルの追加支払いが条件付きで上乗せされる。完了は2026年末までを見込み、米ハート・スコット・ロジノ(HSR)法に基づく待機期間の経過などが条件となる。

買収対象のAlifは、ニューラル処理ユニット(NPU)とグラフィックスアクセラレーションを統合したアーキテクチャを持ち、単核から多核システムまで拡張できる製品群を展開する。同社のチップはすでに量産出荷されており、消費者向け・産業向けの主要顧客で設計採用を獲得していると、リリースは説明している。

ADIは買収の意図について、言葉や画像の解釈を超えて現実世界の文脈を理解し、行動するAIの段階に入りつつあると説明している。ヴィンセント・ローチCEOは、Alifのデジタル処理技術と同社のセンシング・信号処理・電源・接続・ソフトウェアの強みを組み合わせれば、「リアルタイムにセンシングし、推論し、行動する、まったく新しいクラスの安全でインテリジェントなシステム」を顧客が構築できるようになると述べた。対象市場は産業、データセンター基盤、防衛、エネルギー、ロボティクス、デジタルヘルス、ウェアラブルと幅広い。これはあくまで企業側の戦略説明であり、成果は今後の製品展開で検証されることになる。

国家の設備投資と企業のM&Aが向かう同じ地点

韓国の倍増計画とADIの買収は、主体も手段も違うが、向かう方向は共通している。生成AIの普及でデータセンター向けの高性能半導体需要が伸びる中、供給側は「大量生産の能力」と「末端での処理能力」の両面を固めつつある。市場調査会社のResearchAndMarketsも、AIチップ、工場新設、先進パッケージングを牽引役に半導体製造装置への投資が拡大するとの見通しを示しており、米国の半導体製造装置市場は2025年の約287億ドルから2035年には約666億ドルへ伸びると予測している(調査レポート、9月22日付)。

韓国計画の不確実性も残る。倍増目標の中身が、ウエハー生産能力のどこまでを指すのか、どの製品分野を中心に据えるのかは、今後の発表で明らかになる。800兆ウォン規模の民間投資は、半導体市況の低迷期には経営を圧迫するリスクを抱える。ADIの買収は年内完了を見込むが、統合後にエッジAI市場でどれだけの存在感を出せるかが問われる。いずれにしても、半導体産業ではAIインフラを軸にした設備投資と企業買収が同時に進行しており、その規模は市況や金利の変化が計画の前提を揺るがしかねない水準に達している。

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