エージェントフレームワークは「長時間実行」と「監督」の段階に入った

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マイクロソフトは10月上旬、Agent Framework(Python 1.20.0/1.21.0)を2週連続で更新し、コンピューター操作対応やストリーミング時のポリシー評価、DuckDB・SQL Serverのベクトルストア接続を追加した。同じ週、GoogleはAntigravityの階層型マルチエージェント機能「Boost」をGA化した。フレームワーク競争の軸は長時間実行の監督と社内データ接続へ移りつつある。

2週連続リリース、マイクロソフトの更新は「事故防止」に集中している

マイクロソフトは、Semantic KernelとAutoGenの後継とされるオープンソース「Agent Framework」を、10月2日にPython 1.20.0、10月8日に1.21.0、10月7日には.NET向け1.24.0と、約1週間で3本のリリースを重ねた。GitHubの公式リリースノートによると、1.20.0ではFoundry上でネイティブなワークフローをホストする機能(Foundry Responses/Invocations対応)や、DuckDBとSQL Serverのネイティブベクトルストアコネクタ、Responsesクライアントへのネイティブなコンピューター操作(computer-use)対応が追加された。応答ストリームのゲートとバッファリング、セッション単位のファイルアクセス隔離も入っている。

10月8日の1.21.0では、変更の重心がさらに「運用の安全側」へ寄った。ストリーミング応答に対してバッファ全体を使ったPurviewのポリシー評価に対応し、エージェントをツールとして呼び出す際にプロバイダー保有のセッション状態を分離する変更が入った。コード実行系のCodeActツールがセキュリティ強制の仕組み(FIDES)をサポートできない場合に警告を出す機能も追加されている。OpenAIクライアントには推論努力度(reasoning-effort)の上限指定オプションが加わり、コストと応答品質の制御をしやすくなった。

新機能の華々しさよりも、ポリシー評価・状態分離・アクセス隔離・警告といった、本番環境での事故を防ぐ仕組みが更新の中心にある点が特徴だ。

Googleの「Boost」と「Teamwork」、階層構造の本格運用が始まる

Googleも同じ週に動いた。Google Cloudの公式リリースノート(10月6日付)によると、開発ツールAntigravityの2つの機能について管理者によるアクセス制御がGA(一般提供)になった。1つは、階層型のマルチエージェント構成で複雑なアルゴリズム課題や深いデバッグを処理する「Boost」。/boostコマンドで呼び出され、Antigravity内でGAとなっている。もう1つは、大規模・長期間のプロジェクトを自律的なサブエージェント群で実行する「Teamwork」で、/teamwork-previewコマンドによるプレビュー提供だ。

さらに10月8日には、AnthropicのClaude Opus 5.5とClaude Sonnet 5.5をAntigravity 2.0・Antigravity CLI・Antigravity for IDEsで利用可能になった。サードパーティーモデルは既定でオフで、管理者がコンソール上で明示的に同意・有効化する。課金は従量制で、思考レベル(Low/Medium/High/Max)を指定して利用する。同じ日、ロイターはGoogle Cloudが仕事向けのエージェント製品を発表したと報じている。

単一のエージェントではなく、複数のエージェントを階層で編成して長期のタスクに当たる──両社の設計思想はこの方向で一致しつつある。

DuckDBからMCPまで、社内データへの「直結」が加速する

今週の更新には、エージェントを社内データにどう接続するかという共通のテーマも見える。マイクロソフトは1.20.0でDuckDBとSQL Server、1.21.0ではアルファ版ながらOracleのネイティブベクトルストアコネクタを追加した。専用のクラウドベクトルDBを新調しなくても、既存のデータ基盤を検索基盤として使える道が広がっている。

Googleも10月2日、AlloyDB for PostgreSQL・BigQuery・Cloud SQL・Spannerの各コネクタで「フェデレーテッドクエリモード」をプレビュー公開した。Model Context Protocol(MCP)経由でユーザー自身の認証情報を使い、データをコピーせずにその場でクエリする方式で、データカタログ統合も同時にプレビューに入った。エージェントの応答根拠を社内の一次データに置くという方向で、両社の歩みは揃いつつある。

選定の判断軸は「何をさせるか」から「どう監督するか」へ

ここまでの事実から読み取れるのは、フレームワーク選定の判断軸が変わりつつあるということだ。かつての議論が「どのモデルをどう呼び出すか」に集中していたのに対し、今週の更新の中心は、ポリシー評価、セッション状態の分離、ファイルアクセスの隔離、管理者による機能制御といった監督の仕組みにある。

これは当然の流れとも言える。長時間・マルチエージェントで動くシステムほど、単一応答の精度よりも「誰が何を許可されているか」の管理が成否を左右する。BoostやTeamworkのような階層構造は、その分だけ権限と責任の設計を前提として要求する。エージェントを導入する側は、モデル対応表と同じ重量で、ガバナンス機能と既存データ基盤への接続性を比較する段階に入ったと考えられる。

出典:
– Microsoft Agent Framework Releases(GitHub公式)
– Gemini Enterprise release notes(Google Cloud公式)
– Google Cloud introduces Gemini agent for work(ロイター)

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