コウモリの故郷は欧州、6,500万年前──103種のゲノムが描き直した系統樹

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現生21科すべてを含む103種のコウモリのゲノムと44種の化石を統合した国際解析で、コウモリの系統樹が大幅に描き直された。コウモリは約6,000万〜6,500万年前の後期暁新世に欧州で誕生し、飛行とエコロケーションは進化のごく初期に獲得された可能性が示された。長寿や病気への抵抗性の遺伝的基盤を探る資料にもなる。

コウモリは、持続的な飛行を実現した唯一の哺乳類であり、現生哺乳類の約5分の1を占める一大グループだ。エコロケーションによる暗闇での航行、体サイズの割に長い寿命、高い病気への抵抗性——他の哺乳類には見当たらない特徴をいくつも備える。ところが「どの科とどの科が近縁なのか」「そもそもどこで生まれたのか」といった基本的な問いは、長らく定まった答えがなかった。

その争点にメドをつけたのが、Bat1Kコンソーシアムの論文「Reference genomes and fossils revise bat family phylogeny and biogeography」だ。10月1日発行のNature誌(第658巻8134号)に掲載された査読済み論文で、64か国137名の著者が103種分のゲノムと44種の化石の形態データを束ね、コウモリの進化史を再構成した。

21科すべてのゲノムがそろい、系統争議が動いた

Bat1Kは、現生コウモリ全種のゲノム解読を目指す国際コンソーシアムで、ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(UCD)のエマ・ティーリング教授が共同設立者の一人である。今回の解析では、染色体レベルのゲノムアセンブリ103種分(うち42種分を新規に作成)を用意し、現生コウモリの全21科を網羅した。テキサスA&M大学の発表によれば、そこに現生種と絶滅種を含む最大級の形態データセットが組み合わせられたという。

結果として、これまで対立していた科間の系統関係のいくつかが解決され、想定外の近縁関係を示すグループも現れたと報告されている。ティーリング教授は「数十年にわたる研究と矛盾する結果を経て、コウモリの特異な形質がどこでどのように進化したかを正しく理解するために使える、頑健な系統樹をようやく手に入れた」と述べている。

ゲノムの部位によって系統が食い違う理由

コウモリの系統解析が難航してきた原因の一つは、ゲノムの領域によって推定される系統関係が食い違うことだった。研究チームはその理由を、初期のコウモリ系統間での遺伝子のやりとり(遺伝的浸透)にあると推定している。近縁な系統同士が交雑を繰り返すと、ゲノムのある領域はAという関係を、別の領域はBという関係を語るようになる。

鍵になったのはX染色体だった。解析の結果、X染色体の一部は他の領域に比べて系統関係の本筋を特に明瞭に保持しており、このシグナルをもとに、数十年未決だった系統樹の争点が解決に向かったという。

故郷は欧州、時期は約6,000万〜6,500万年前

系統樹が固まったことで、コウモリの分布の歴史を遡る解析が可能になった。ゲノムと化石を同時にモデル化する手法で共通祖先の時期と場所を推定した結果、コウモリは後期暁新世(約6,000万〜6,500万年前)の欧州で生まれ、子孫がまずアフリカへ、その後の多様化の中でアメリカ大陸・アジア・オーストラリアへと広がったと推定された。起源地としては従来、アフリカ、アジア、北米の各説が並立していた。

上級著者のリリアナ・ダバロス教授(ストーニーブルック大学)は「化石種と現生種の進化を同時にモデル化するこの手法は、ゲノムデータを織り込みながら最古のコウモリ化石群を特定し、コウモリがいつどこで生まれたかを明らかにできる、他の手法にはできないものだ」と説明する。ただし、時期の推定には6,000万〜6,500万年前という幅があり、欧州は「最も可能性が高い」起源地として挙げられたものである点は押さえておきたい。

飛行もエコロケーションも、多様化より前に登場

コウモリらしさの中核である飛行とエコロケーションの由来にも示唆が得られた。系統樹の最も古い分岐に位置する化石コウモリVielasiaの分析から、エコロケーションはコウモリ進化の開始直後、現生グループの多様化が始まる前にはすでに出ていた可能性が示されたという。飛行とエコロケーションがともに早い段階で獲得されたことが、その後の適応放散を下支えしたと研究チームは報告している。

ティーリング教授は「コウモリは真の飛行を進化させた唯一の哺乳類であり、私たちの結果は、哺乳類の飛行が最初に進化した場所として欧州を指し示している」と述べている。

祖先のゲノムを復元し、長寿と免疫の謎に迫る

今回のデータセットからは、全現生コウモリの共通祖先のゲノムも計算的に再構築された。上級著者のミヒャエル・ヒラー教授(ゼンケンベルク研究所)は「最先端のDNAシーケンシングと計算手法を組み合わせてこれらのゲノムを生成・比較し、含まれる遺伝子を同定した」と手法を説明する。

コウモリは体の大きさの割に極端に長寿で、多くの種が病気に強い。祖先ゲノムと現生103種の比較は、飛行・エコロケーション・長寿・病気抵抗性に関連する遺伝的変化を探る足がかりになる。研究チームは、この資源が老化・免疫・病気抵抗性の研究に役立つ可能性があるとしているが、ヒト研究への応用は将来の論点だ。

上級著者のソンヤ・ヴェルネス教授(セントアンドリューズ大学)は「コウモリは私たちを驚かせ続けている。進化の最も偉大な実験の一つです。国際協力の集大成であるこのゲノム資源によって、彼らの卓越した生物学がどう進化したのかをようやく理解し始めている」と結んでいる。ティーリング教授は「このデータセットは、ニュージーランドからマダガスカルまで最も辺境の場所から試料を集めた、世界中の野外研究者たちの数十年にわたる仕事を代表するものだ」とも述べる。

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