ベピコロンボ、水星到着の最終シーケンスへ——11月21日の軌道投入と残る3つの関門

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ESAとJAXAの合同ミッション「ベピコロンボ」が、水星との合流を目前に控えている。9月3日に推進モジュール(MTM)の分離に成功し、9月24日にはMTM分離後はじめての軌道修正噴射を完了。11月21日の周回軌道投入を経て、2027年4月から2機の探査機による本格観測が始まる予定だ。8年・約99億キロの旅の残り工程と、このミッションが狙う科学の意義を整理する。

8年・99億キロを支えた「推進モジュール」との別れ

ベピコロンボは2018年10月20日にアリアン5ロケットで打ち上げられた、ESA(欧州宇宙機関)とJAXA(宇宙航空研究開発機構)の合同水星探査ミッションだ。ESAの発表によれば、探査機は打ち上げから8年間で約99億キロを飛行し、地球1回・金星2回・水星6回の計9回のスイングバイを経て、いま水星への最終接近段階にある。

水星への到着が難しいのは、太陽に近づくほど探査機が太陽重力で加速され、単純に直進すれば速くなりすぎるためだ。スイングバイと電気推進を繰り返して速度を捨てながら接近する必要があった。

この長い旅を押し進めてきたのが、9月3日に役割を終えた水星トランスファモジュール(MTM)だ。ESAによると、MTMは小型車ほどの大きさで、全長15メートルの太陽電池翼を2枚備え、キセノンガスをプラズマ化して4基のイオンスラスタで噴射する太陽電気推進(SEP)で複合機を導いてきた。電気推進は2026年6月15日に停止され、9月3日に複合機から分離された。

分離は地球から約2億キロの距離で実施された。ドップラー信号の変化が分離の最初の兆候となり、約2時間後の信号再捕捉によって成功が確認された。運用を統括したESAのイグナシオ・クレリゴ宇宙機運用マネージャーは、完璧な分離だったと述べている。アンテナも計算機も持たないMTMは、このあと太陽周回軌道に留まり続ける。

9月24日の噴射が裏付けた最終接近の精度

MTMとの分離後、推進の主体は欧州側の水星惑星軌道機(MPO)の化学推進系に移った。ESAの9月28日付更新によると、9月24日、MPOは軸方向スラスタを新しい構成で初めて点火し、8分42秒の燃焼で毎秒11.4メートルの速度変更を達成した。燃焼中、ESAの運用チームはスペインのセブラロス深宇宙局経由で電力・温度・圧力・加速度・ドップラーの各データを監視した。

これはMTM分離後では初めての計画済み軌道修正であり、ESAは11月の軌道投入シーケンスに向けて、同様の小規模な軌道修正を複数回実施する予定だと説明している。毎秒11.4メートルという値そのものは小さいが、残り約1カ月半の飛行で目標の軌道に乗せ続けるための精度を確認する最初の実証という意味がある。

なぜ到着は1日ではなく「6カ月の工程」なのか

9月3日の分離時点で、ベピコロンボは水星まで300万キロ以上の距離にいた。それでもESAがこの到着フェーズを、同機関がこれまでに試みた中で最も複雑な惑星到着シーケンスの一つと呼ぶのには理由がある。ベピコロンボの到着は単一のイベントではなく、複数の段階で構成されるからだ。

残る関門は3つある。第1は2026年11月21日の水星周回軌道投入(MOI)。第2は12月9日から10日にかけての、JAXAのMio(ミオ)とMPOの分離だ。そして第3が、2027年3月のMPOの最終科学軌道への投入となる。2機による本格的な科学観測は、2027年4月に始まる計画である。

補足しておくと、この到着時期は当初計画より遅れている。ESAは、MTMの太陽電池から得られる電力が低下する問題が発生し、飛行経路を再設計したと説明している。

2機同時周回が開く、これまで見えなかった水星

ESAのミッション概要では、ベピコロンボは水星を周回する史上2番目にして最も複雑なミッションと位置づけられている。人類の探査機が水星を周回したのは、これまでNASAのメッセンジャー(2011〜2015年の周回運用)だけだった。水星は内太陽系で最も探査されていない惑星とされる。

最大の特徴は、ESAのMPOとJAXAのMioという2機が同時に水星を周回する、史上初の運用形態だ。MPOが表面と内部の構造を、Mioが磁気圏とその変動を主に担当し、同じ現象を2点から同時に観測できる。ESAが掲げる主要な謎は、灼熱の惑星の極域クレーターに水氷が存在する理由、地球以外の地球型惑星で唯一となる固有磁場の起源、水星表面に見られる窪み「ホローズ」の正体などだ。

ESAのゲラント・ジョーンズ主任プロジェクト科学者は、巡航段階と9回のスイングバイですでに科学成果を得られているものの、MPOとMioの観測機器を本格的に運用できる日を心待ちにしている、と述べている。

8年間の旅の着地点で、最も調べられていない内太陽系の惑星がどう見えてくるか。その最初の答えは、11月21日の軌道投入の結果として届く。

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