Roman望遠鏡が初の星光を捉えた――ドーナツ状の「ぼけ」は想定どおり

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NASAのNancy Grace Roman宇宙望遠鏡が主観測装置「広視野装置(WFI)」の18個の赤外線検出器を起動し、初めて恒星光を捉えた。公開されたテスト画像の星はドーナツ状にぼやけて見えるが、これは光学系をまだ調整していない段階では想定どおりの姿だとNASAは説明している。焦点合わせと姿勢制御の確認を経て、2027年初頭には本格的な科学観測画像が公開される見通しだ。

3億画素の「目」が開いた瞬間

NASAは2026年9月15日、8月30日に打ち上げたNancy Grace Roman宇宙望遠鏡の公式ブログで、主観測装置である広視野装置(Wide Field Instrument: WFI)の起動に成功したと発表した。WFIは3億画素の赤外線カメラで、18個の検出器を備える。1枚の画像が見かけの大きさで満月よりも大きな空の領域を、ハッブル宇宙望遠鏡に匹敵する鮮明さで捉える設計だ。

発表とともに公開された最初のテスト画像には、無数の星が写っている。ただしその星はいずれも、シャープな点ではなく、数千ピクセルに広がるドーナツ状のぼんやりした像として現れている。NASAはこの画像を「装置が宇宙で初めて宇宙に目を開いた瞬間」をとらえたものだと説明。検出器アレイが打ち上げ時の格納状態のまま、望遠鏡の光学系から遠く焦点が大きく外れた位置にあったためにこのように見えるのであり、「現在の構成を考えれば予想どおりの見え方」だとしている。

つまり、この「ぼやけた星の海」は故障ではない。星の光を鋭い点に収束させる焦点調整は今後の工程で行われるもので、この画像は光学系の調整を進めるための基準点になると同チームは説明している。

検出器を目覚めさせるまでの10日間

WFIの起動は、単に電源を入れるだけでは済まなかった。NASAのブログによると、チームはまず検出器を比較的温暖なマイナス65℃(華氏マイナス85度)に保ったまま10日間放置し、乾燥と汚染除去を進めた。9月11日朝にヒーターを切り、装置を華氏マイナス225度(マイナス143℃)まで冷却。この温度に達して初めて、18個の赤外線検出器の起動が可能になった。検出器はその後も冷却を続け、最終的な動作温度である約華氏マイナス300度(マイナス183℃)に向かう。

検出器起動の夜には較正システムを稼働させ、翌朝からテストデータの送出を開始した。続いて、波長を選ぶフィルターやプリズムなどを収めた「エレメントホイール」の無重力状態での初動作試験と、今後数十万枚の画像にわたって使われるフォーカス機構の動作確認も行われた。いずれの試験でも装置は期待どおりに動作したという。

「地上で装置を組み立て、試験するために長年努力してきた末に、宇宙で動作しているという確認を得られた」。NASAゴッダード宇宙飛行センターのWFI科学者Josh Schliederは、ブログ記事でこうコメントしている。「やるべきことはまだ多いが、画期的な科学に向かって進んでいる」

重力をレンズ代わりに、既知手法が届かない惑星を探す

Romanが本格稼働後に力を発揮するのが、重力マイクロレンズによる太陽系外惑星の探査だ。NASAのミッション解説によれば、Romanは銀河系の内側の領域をマイクロレンズ・サーベイで観測し、1,000個を超える太陽系外惑星の発見が期待されている。

マイクロレンズ法は、前景の恒星の重力が背景の星の光を曲げて一時的に明るく見せる現象を利用する。惑星自身の光や影を直接見る必要がないため、主星の手前を惑星が横切るトランジット法や、惑星の重力で主星が揺れる視線速度法が苦手とする「恒星から離れた軌道を回る寒冷な惑星」に敏感だ。NASAによると、現在確認済みの太陽系外惑星は6,000個を超えるが、その多くは恒星の近い軌道に偏っている。Romanは、太陽系のように外側に木星型や氷の惑星が並ぶ体系が宇宙でどれだけ一般的かを問うデータを提供する位置づけだ。

惑星探査と並ぶもう一つの柱が、宇宙の膨張を加速させるダークエネルギーと宇宙の大規模構造の調査だ。NASAの資料によれば、主鏡はハッブルと同じ2.4メートルながら視野ははるかに広く、この設計こそが広域サーベイを可能にしている。主なミッション期間は5年間で、最大5年間の延長も想定されている。

L2への旅と、2027年初頭まで続く調整工程

Romanは現在、地球から約160万キロメートル(100万マイル)離れた第2ラグランジュ点(L2)への移動途上にあり、到着までの間、数か月にわたる較正と試験が続く。直近の工程には、望遠鏡が観測対象を正確に捉え続けるためのガイドシステム(fine-guidance system)の起動と、観測装置全体の焦点調整が含まれる。

もう一台の装置である惑星直接撮像の技術実証機「コロナグラフ」も、9月1日の電源投入に続いて、デジタル・電子・機構系の初期試験を終えた。恒星のまぶしさを遮って周囲を回る惑星の反射光を浮かび上がらせる仕組みで、NASAは「惑星の直接撮像のためにこれまで宇宙に打ち上げられた技術の中で最先端」と位置づけている。

NASAによれば、Romanの初の科学画像は2027年初頭までに公開される予定だ。ドーナツ状のぼけた星から始まった調整作業が、惑星科学と宇宙論の両方にまたがる観測成果につながるか。しばらくはNASAのミッションブログから目が離せない。

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