TSMC、テキサス第2拠点を検討─マスク氏のTerafab協議が決算前の焦点に
TSMCがテキサス州での第2の製造拠点構想を検討していることが報じられ、10月15日の第3四半期決算発表前の最大の焦点となっています。イーロン・マスク氏が進める巨大半導体工場「Terafab」への関与も、本人の投稿で協議中であることが確認されました。一方で工場の運営権をめぐる主張が交錯しており、米国投資の加速と先端プロセス競争の行方が同時に問われています。
マスク氏は運営権の保持を明言、TSMCの役割は限定的に
テキサス州で計画されている巨大半導体工場「Terafab」をめぐり、イーロン・マスク氏は10月7日、自社企業(テスラ、スペースX)が工場の建設と運営の主導権を完全に保持すると明らかにしました。TSMCの参加形態については、同社が工場敷地の一部をサブリース(転貸借)できる可能性に言及するにとどまり、共同運営を示唆する報道を退けました。
このプロジェクトの初期投資は約168億ドルと見積もられ、長期的な設備投資総額は最大で1,190億ドルに達すると報じられています。製造パートナーとしては、インテルが2026年4月に次世代プロセス「14A」の提供で参画を表明しています。10月7日の発言を受けた時間外取引で、TSMCのADR(米国預託証券)は一時1.3%下落し、インテル株は1.6%上昇しました。
検討されている2つの参加構造
TSMC側のTerafabへの関与については、半導体ジャーナリスト、ティム・カープラン氏のニュースレター「Culpium」が報道し、台湾・工商時報などが伝えました。検討されている構造は大きく2つあります。1つはTSMCがファブの所有と運営を担い、スペースXとTerafab側が株式を取得し、ウェハーの購入コミットメントを行う案。もう1つはスペースXとTerafab側が過半数の株式を保有し、TSMCは出資を抑える一方でプロセス技術と工場運営のノウハウを提供する案です。
マスク氏自身は10月5日、自身のXへの投稿で「まだ話し合いの段階だが、何か実現するかもしれない(Just discussions, but something may come of it)」と述べ、協議の存在を認めています。
一方、台湾の経済誌「今周刊」(Business Today)は、Terafabが目指す垂直統合型の製造体制は、NVIDIAやアップル、AMD、ブロードコムといったファブレス顧客に製造を提供するTSMCの純プレイファウンドリモデルと根本的に衝突すると指摘します。TSMCにとって望ましいシナリオは、Terafabを自社のテキサス拡張計画に取り込み、マスク氏を大口のアンカーカスタマーと位置づけることだと同誌は伝えています。
テキサス第2拠点と2,650億ドルの米国投資
Terafab協議と並んで注目されるのが、TSMC自身のテキサス拡張構想です。ブルームバーグは10月1日、TSMCがテキサス州に新キャンパスの建設を検討しており、数十億ドル規模の追加投資につながる可能性があると報じました。台湾の中央通訊社(CNA)が伝えるところによれば、ダラス周辺に最大6基の先端ウェハーファブからなる第2の米国拠点が想定されており、テキサス拡張の総額が2,650億ドルを超える可能性があるとする報道もあります。
裏付けとなる数字も積み上がっています。TSMCは2026年の設備投資ガイダンスを600億〜640億ドルに引き上げ、今後3年間の支出は直近3年間を大きく上回る見通しを示しています。アリゾナ州では追加の1,000億ドルの投資により、州内の投資計画総額が2,650億ドルに達しています。
第3四半期の会社側ガイダンスは、売上高446億〜458億ドル、粗利率65〜67%です。JPMorganはいずれも上限付近に到達すると予想しています(工商時報報道)。来年以降の値上げも取りざたされており、先端ノードで5〜10%、先進パッケージングで10〜15%、成熟ノードで3〜5%の引き上げが機関投資家の間で推計されています(中央通訊社報道)。
A14対14A、決算は先端競争の読みどころにも
10月15日の決算では、先端プロセスの開発競争への言及も注目されます。TSMCの次先端ノード「A14」は、新竹・宝山でのパイロット生産が2027年第1四半期に前倒しされる可能性が工商時報に報じられています。インテルの「14A」のリスク生産も同期間の開始が報じられており、両社の日程がほぼ重なる見通しです。ただしインテルの公式ロードマップでは、14Aによる社内製品の投入は2027年後半、量産は2028年としており、こちらはより保守的な日程です。
先進パッケージングでも構図が動いています。アナリストのジェフ・プー氏は、メディアテックがGoogleのAIチップ「TPU v9」の発注をインテルのパッケージング技術「EMIB-T」に100%振り分けるとの予想を示しており、TSMCの先進パッケージング「CoWoS」を取り巻く環境に新たな競争相手が加わる可能性があります。
現時点で確定している情報はTSMC自身のガイダンスと投資計画、そしてマスク氏の発言までです。Terafab構想がTSMCの純プレイモデルを変えるのか、大口顧客という形で吸収されるのか──答えの一部は、10月15日の決算電話会見で示される見込みです。


